共有名義の不動産は売却できる?方法や流れ、よくあるトラブルと対処法を解説

共有名義の不動産は売却できる?

共有名義の不動産を売却したいと思っても、そのまま売れるのか不安になりますよね。

結論から言うと、所有するマンションや土地などが共有名義の場合、他の共有者の承諾を得なければ売却はできません。ただし、自分の持分だけであれば、承諾を得ずに売ることも可能です。

共有名義の不動産は売却方法が複数あるため、それぞれの特徴や違いを理解し、適切な方法を選択することが重要です。

本記事では、共有名義の不動産売却方法や流れ、必要書類、よくあるトラブルとその対処法について詳しく解説します。ぜひ、参考にしてください。

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目次

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共有持分とは?各共有者が持つ所有権の割合

共有持分とは、複数人で不動産を所有する場合に、各個人が持つ所有権の割合のことです。また、複数人で一つの不動産を所有する状態を共有名義と呼びます。

例えば、次のようなケースが共有持分(共有名義)となります。

  • 夫婦が共有名義で不動産を購入して登記した場合
  • 兄弟姉妹など複数名が相続した不動産を共有する場合
  • 親子が資金を出し合って二世帯住宅を購入する場合

このような共有持分による不動産の所有には、ローンを利用しやすくなる、節税効果がある、税金の控除を受けられるなどのメリットがあります。

それぞれが持つ権利の割合『持分割合』

共有持分における割合(持分割合)は、各所有者が不動産を購入する際に支払った金額によって決まります。持分割合は、以下の計算式で算出できます。

  • 持分割合:自己負担額÷不動産の購入代金

自己負担額とは、自己資金(頭金)やローン借入金の総額を指します。例えば、夫が3,000万円、妻が2,000万円を出し合って5,000万円のマンションを購入した場合、持分割合は以下のとおりです。

  • 夫:5分の3(3,000万円÷5,000万円=60%)
  • 妻:5分の2(2,000万円÷5,000万円=40%)

もし、夫婦がそれぞれ2,500万円ずつ出し合う場合は、持分割合は2分の1(50%)ずつになります。

共有名義の不動産売却5つの方法

マンションやアパートなど共有名義の不動産は、以下の方法で売却可能です。

  • 他の共有者全員の同意を得る方法
  • 共有持分のみ売却する方法
  • 自分の持分を共有者に買い取ってもらう方法
  • 土地を分筆して単独名義にする方法
  • 売却してリース契約を締結するリースバックをする方法

共有名義の不動産は複数の所有者がいるため、状況に応じた売却方法を検討することが重要です。各売却方法について詳しく見ていきましょう。

他の共有者全員の同意を得る方法

他の共有者全員の同意を得れば、共有名義であっても売却が可能です。

この方法は、市場価格での売却が可能であり、得られた収益は共有者の持分に応じて配分されます。共有者が少ない場合や、円滑に同意を得られる場合は、魅力的な選択肢となります。

ただし、全員の同意が得られない場合は売却できないため、注意が必要です。例えば、共有者5人のうち、4人が売却に同意していても、1人が反対していれば売却することはできません。また、売却手続きに関しては代表者が請け負うことになります。

共有持分のみ売却する方法

自分の持分だけであれば、他の共有者の承諾を得ていなくても売却することが可能です。

ただし、マンションや一戸建てなどを物理的に分けることは難しく、土地の場合にのみ検討できる方法です。また、自分の持分のみ売却する場合、購入者にとってあまりメリットがないため、通常は売却価格が低くなります。

例えば、3,000万円の不動産で夫婦がそれぞれ2分の1の共有持分で、夫の持分のみを手放す場合、1500万円での売却は難しいでしょう。一般の購入者を見つけることも容易ではなく、多くの場合、買取業者を利用することになります。

このように、自分の持分だけであれば自由に売却することは可能ですが、売却価格が低くなりやすいことや、土地のみに限られることを理解しておく必要があります。

自分の持分を共有者に買い取ってもらう方法

共有者間で持分を売買する方法もあります。

例えば、共有者の一人が、他の共有者の持分をすべて買い取れば、その人が単独名義で不動産を所有できます。単独名義になることで、所有者は自由に不動産を活用でき、共有者の同意を得る必要もありません。持分を個人間で売買する場合は、仲介手数料も不要です。

ただし、共有者が複数いる場合は「Aさんに売ったのはなぜなのか」「自分には話がなかった」など、揉める可能性があるため注意が必要です。また、相場よりも極端に低い金額で売買した場合は、贈与税が発生する恐れがあります。

土地を分筆して単独名義にする方法

土地が共有名義の場合、分筆する方法も考えられます。

分筆とは、一つの土地を複数の土地に分割して登記することです。土地は一筆、二筆と数えられるため、土地を分割することを分筆といいます。分筆を行うことで、共有者は各自の持分に応じて区分された土地を単独名義で所有でき、共有名義の状態を解消できます。

単独名義になれば、他の共有者の同意を得る必要もなく、土地を自由に活用することが可能です。ただし、分筆された土地の形状や位置が異なるため、資産価値に差が生じる可能性があるため注意が必要です。

また、分筆には測量や登記に伴う手続きや費用が発生します。分筆を検討する際には、不動産会社など専門家に相談しましょう。

売却してリース契約を締結するリースバックをする方法

共有名義のマンションや一戸建てなどに共有者が居住していて、売却に難色を示している場合は、リースバックを検討する方法があります。

リースバックとは、所有する不動産を売却後にその不動産を賃貸として契約する手法です。この方法を活用することで、自宅を売却してまとまった資金を手にした後も、引き続き賃貸として居住できます。共有者が不動産に居住していて退去が難しい場合でも、リースバックを利用すれば売却が可能です。

ただし、リースバックを利用すると、家賃がこれまでの住宅ローン支払額を上回る可能性もあります。また、売却時の価格が相場より低い場合もあるため、注意が必要です。リースバックを検討する際には、信頼できる不動産会社に相談しましょう。

共有持分買取業者に不動産売却した場合のリスク

持分を業者に売却する場合、以下のリスクに警戒が必要です。

  • 他の共有者との関係悪化
  • 共有物分割請求訴訟を起こされる可能性がある

これらを事前に理解しておくことで、リスクを回避できる可能性が高まります。それぞれの内容について詳しく見ていきましょう。

他の共有者との関係悪化

業者に持分を売却すると、他の共有者との関係悪化が懸念されます。買取業者は、持分を購入した後、単独名義を目指して他の共有者に営業するか、そのまま転売することが多いです。

もし共有持分の売却を他の共有者に知らせていない場合、業者からの営業などで、それを知ることになります。売却した事実を事前に伝えなかったことで、他の共有者は不信感を抱き、トラブルに発展する可能性もあります。

共有者との関係があまり深くない場合は問題ないかもしれませんが、家族や親戚などの場合は、今後の付き合い方に大きな影響を及ぼすこともあるので注意が必要です。

共有物分割請求訴訟を起こされる可能性がある

業者は、持分買取の営業がうまくいかない場合、共有物分割請求を行うことがあります。この手続きは、不動産の共有状態を解消するために行われるもので、当事者同士で話し合い、持分割合にもとづいて不動産を分割します。

しかし、話し合いがまとまらない場合、共有物分割請求の訴訟に発展することもあるので、注意してください。その場合、競売が行われ、不動産を不本意な形で手放さなければならないこともあります。

このようなトラブルやリスクが生じた場合は、詳しい弁護士に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。

共有名義の不動産売却の流れを5STEPで解説

共有名義の不動産売却の流れは、以下のとおりです。

  1. 共有者の確認
  2. 売却をする窓口担当を決定する
  3. 費用負担を決める
  4. 売却活動を行う
  5. 引き渡しが完了したら確定申告をする

これらの流れを事前に把握しておくことで、計画的に進めることが可能になります。それぞれの内容について、詳しく見ていきましょう。

STEP
共有者の確認

最初に共有者が誰で何人いるのかを明確にすることが重要です。

特に、相続が何度も行われた不動産では、共有者が増えすぎて、登記事項証明書(登記簿謄本)に記載されていない人が共有者になっていることもあります

後から共有者の漏れが判明した場合、あらゆる手続きを一からやり直さなければならない可能性があります。

そのため、不動産の共有者を早い段階で明確にしておくことが重要です。登記事項証明書は、法務局で取得が可能です。

STEP
売却をする窓口担当を決定する

売却を検討している不動産が共有名義の場合、誰かが中心となって共有者の同意を得たり、手続きを進めたりする必要があります。

不動産売却にはさまざまな手続きが必要なため、不動産売却に関する知識や経験のある方が理想的です。そのような方が担当すれば、手続きを比較的スムーズに進められる可能性が高まります。

一方、知識や経験の乏しい方が担当すると、適切な判断ができず手続きに時間がかかる可能性があり、売却のチャンスを逃す恐れがあります。また、共有者の意向が変わる可能性もあるため注意が必要です。

共有者全員に関係するため、売却の窓口担当を早めに決めましょう。

STEP
費用負担を決める

不動産の売却に伴い、さまざまな費用が発生します。後でトラブルにならないように、共有者間で事前に費用の負担割合を決めておくことが重要です。

不動産売却にかかる主な費用は、以下のとおりです。

費用内容
仲介手数料不動産仲介会社に支払う手数料(成功報酬)です。
宅地建物取引業法(宅建業法)で上限が規定されており、売買価格が400万円を超える場合、手数料の上限は「売買価格×3%+6万円×消費税」の速算式で計算できます。
譲渡所得税不動産売却の利益に課される税金です。
所得税、復興特別所得税、住民税で構成されており、税率は不動産の所有期間によって異なります。
登録免許税不動産の所有権を移転する際に課される税金です。
税額は固定資産税評価額に応じて異なります。
司法書士手数料司法書士に登記手続きを依頼する際にかかる手数料です。
抵当権抹消登記費用不動産の抵当権を抹消する際にかかる費用です。
住宅ローン返済手数料住宅ローンを完済する際に発生する手数料です。
金融機関によって手数料の金額が異なります。
印紙税売買契約書などの課税文書に課される税金です。
税額は売買金額に応じて変動します。
測量費用土地の境界がわかりにくい場合や実際の面積が登記簿と異なる場合などは、測量が必要となり、それに伴う費用が発生します。
その他の費用ハウスクリーニング費用や引っ越し費用、諸費用などがかかります。

費用の負担割合について話し合うことは抵抗があるかもしれませんが、非常に重要なことです。

STEP
売却活動を行う

共有者間で不動産の最低売却価格と売り出し価格を決めます。最低売却価格を決めておく理由は、売り出し価格で買主が見つからず、価格を下げる必要が生じるかもしれないためです。事前に最低売却価格を決めておくことで、価格交渉にも対応しやすくなります。

最低売却価格と売り出し価格が決まったら、売却活動をスタートします。内覧が必要な場合もあるため、事前にハウスクリーニングなどを行い、内覧当日は共有者間で協力し合いましょう。

通常、買主との直接的な交渉や対応は不動産会社が行います。

STEP
引き渡しが完了したら確定申告をする

売買契約が成立した後、買主の住宅ローンなどに問題がなければ、引き渡しとなります。所有権の移転登記は、司法書士に委託するのが一般的です。

不動産売却により利益が発生した場合は、確定申告を行い、譲渡所得税を納付します。確定申告は、各共有者がそれぞれ行う必要があるため注意が必要です。

通常、確定申告期間は2月16日〜3月15日であり、期間内に申告しなかった場合は、延滞税などが発生します。

また、一定の要件を満たす場合には、「居住用財産の3,000万円特別控除」が適用され、税負担を軽減することが可能です。この特別控除の対象になる場合は、確定申告を行うことで、譲渡所得から最大3,000万円の控除を受けることができます。

初めて確定申告を行う場合は作成に時間がかかることがありますので、必要書類などは早めに準備しておきましょう。

共有名義の不動産売却に必要な書類

共有名義の不動産売却に必要な書類は、以下のとおりです。

  • 登記識別情報通知書
  • 地積測量図・境界確認書
  • 印鑑証明書・身分証明書・住民票

スムーズな売却手続きのためにも、各共有者はこれらの書類を準備しておく必要があります。

登記識別情報通知書

登記識別情報通知書は、不動産の所有者であることを証明するために、登記名義人に交付される書類です。以前は「登記済権利証(権利証)」が発行されていましたが、不動産登記法の改正により、2006年以降は登記識別情報通知書が発行されるようになりました。

この書類は、抵当権抹消手続きや所有権移転登記などの際に必要です。登記識別情報通知書には、以下の情報が記載されています。

  • 不動産番号
  • 登記の目的
  • 登録名義人
  • 登記識別情報(12桁)など

各共有者は、それぞれ登記識別情報通知書を準備する必要があります。

地積測量図・境界確認書

土地を含む不動産を売却する場合、土地の境界を確認するために地積測量図や境界確認書が必要です。地積測量図は法務局で入手可能です。

もし測量が必要な場合は、土地家屋調査士に依頼する必要があります。その場合、測量費用として10万円〜20万円程度かかります。

印鑑証明書・身分証明書・住民票

各共有者は、印鑑証明書、身分証明書、住民票を準備する必要があります。身分証明書には、運転免許証や保険証などが使用できます。また、印鑑証明書や住民票は、発行から3ヶ月以内のものが必要です。

共有名義の不動産売却でよくあるトラブル

共有名義の不動産売却でよくあるトラブルは、以下のとおりです。

  • 共有者間で意向が一致しない
  • 共有権利者の連絡先が分からない
  • ​​買取業者がしつこい場合がある

これらのトラブルについて事前に把握することで、リスクを回避し、適切な対処が可能になります。よくあるトラブルについて詳しく見ていきましょう。

共有者間で意向が一致しない

売却する不動産が共有名義の場合、共有者全員の同意が必要であり、同意が得られない場合は売却することができません。同意が得られない場合の主な対処法は、以下のとおりです。

  • 共有者を説得し、同意を得るために時間をかける
  • 共有物分割請求を行う
  • 自分の共有持分のみ売却する

売却のメリットを説明し、共有者を納得させるために努力しましょう。売却後にも住み続けられるリースバックも提案できます。共有者が売却に同意しない場合、共有物分割請求を行うことも考えられますが、共有者との関係が悪化する可能性があります。

また、不動産全体を売却することはできませんが、自分の持分だけを売却することは可能です。ただし、共有者に事前に通知していない場合、トラブルの原因になる可能性があるため注意が必要です。

共有権利者の連絡先が分からない

共有者の連絡先がわからない場合は、住民票や戸籍謄本を調べる方法があります。それでも不明な場合は、不在者財産管理人を家庭裁判所に申し立てることも考えられます。

不在者財産管理人は、家庭裁判所の監督下で共有者の財産を管理・保管し、裁判所の権限外行為許可を取得すれば売却することも可能です。共有者の連絡先がわからずに困っている場合は、弁護士などの専門家に相談してみましょう。

買取業者がしつこい場合がある

共有持分を買取業者に売却すると、他の共有者が業者からしつこい営業を受ける可能性があります。また、共有物分割請求をされることもあります。業者は、すべての共有持分を買い取り、売却することを考えているためです。

そのため、買取業者に売却を検討する際は、事前に共有者と相談することが重要です。共有者同士での売買も選択肢の一つとして考えられます。

まとめ

マンションや土地など所有する不動産が共有名義の場合、売却するには他の共有者の承諾が必要です。承諾が得られなければ、売却はできません。

持分だけを売却することは可能ですが、業者に買い取ってもらう場合は、その後のしつこい営業などに警戒が必要です。共有者との信頼関係が損なわれる可能性もあります。共有者が居住し続けることを望む場合は、リースバックの提案も検討できます。

また、土地は分筆を行い、共有状態を解消することも可能です。もし共有者の連絡先がわからないなど、困ったことが起きた場合は、不動産会社や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

共有名義であっても売却は可能ですので、一歩ずつ進めていきましょう。

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運営者[不動産売却セレクト編集部]

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