スムストックは、既存(中古)住宅の購入・売却に特化した不動産ブランドです。
積水ハウスや住友林業といった大手ハウスメーカーが参加していることから、興味のある方も多いのではないでしょうか。
この記事では、スムストックの概要、および不動産売却にスムストックを利用するメリット・デメリットについて詳しく解説します。
「家を売りたいけど、どの不動産会社に頼めばよいかわからない」
このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。
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スムストックとは
スムストックは、中古住宅に特化した不動産流通システムとして、2008年に誕生しました。
大手ハウスメーカー10社が協働した「優良ストック住宅推進協議会」が根幹となり、協議会の定める基準を満たす優良な中古住宅を「スムストック」として認定し、販売しています。
スムストックに参加している企業は、以下の通りです。
- 旭化成ホームズ
- 住友林業
- セキスイハイム
- 積水ハウス
- 大和ハウス工業
- トヨタホーム
- パナソニックホームズ
- ミサワホーム
- 三井ホーム
- ヤマダホームズ
スムストックとして売却できるのは、基本的に上記の企業によって建てられた家ですが、他のメーカーや工務店で建てた家も依頼は可能です。
スムストック設立の背景
スムストックが設立された背景には、日本で深刻化する「空き家問題」があります。
総務省の統計によると、2023年時点で全国の空き家数900万戸、空き家率は13.8%と、どちらも過去最高の値を記録しました。
また、住宅自体の使用期間も平均38年と、アメリカやイギリスに比べて半分以下の長さであることが明らかにされています。
(参考:令和5年度 住宅経済関連データ – 国土交通省)
このように増え続ける空き家の利活用促進を目的に、スムストックが設立されました。
スムストックでは、より多くの優れた中古住宅が、社会の共有資産として「住み継がれる」ことを目指しているのです。
スムストックに認定されるには
優良中古住宅「スムストック住宅」として認められるのは、以下の3つの条件をクリアした家です。
- 「住宅履歴データ」を保有している
- 長期的なプログラムに沿ってメンテナンスを行っている
- 「新耐震基準」レベルの耐震性を有している
「住宅履歴」とは、”家のカルテ”とも言える情報群です。新築時の設計図や、これまで行ってきたリフォーム・メンテナンス情報を含み、これらが適切に蓄積・整理されていることが「スムストック住宅」認定の条件の一つとなります。
また、建築後50年以上の長期点検・メンテナンス制度によって計画的な点検・修繕を行っていることと、査定時に1981年に施行された新耐震基準に適合していることも求められます。
以上3つの原則に則った中古住宅のみを扱うことで、スムストックブランドの信頼性が保たれていると言えるでしょう。
スムストックの特徴
ここでは、スムストックの3つの特徴について解説します。
- スムストック独自の査定方式がある
- 「スムストック住宅販売士」が査定と販売を行う
- 建物の価値を明確にして販売する
順番に見ていきましょう。
スムストック独自の査定方式がある
スムストックでは、従来の不動産査定と異なる独自の査定「スムストック査定方式」を採用しています。
従来の査定方式との主な違いは、以下の通りです。
内容 | 従来の査定方式 | スムストック査定方式 |
---|---|---|
「優良中古住宅」の基準がある | × | ○ |
建物価格と土地価格を分けて表示する | × | ○ |
スケルトン(構造躯体)とインフィル(内装や設備機器等)に分けて査定する | × | ○ |
購入時の価格が売却価格の基準になる | × | ○ |
引用元:査定方式について|スムストック
従来の査定方式においては、躯体(スケルトン)と内装・設備(インフィル)がまとめて査定されるため、優れた躯体を持つ丈夫な家が適切な評価を得られないケースがありました。
しかし、スムストック査定方式では個別に査定するため、建物の価値が正しく評価されます。
また、これまで土地と建物の総額で表示されていた査定額も、土地と建物それぞれ分けて表示されることから、より納得度の高い査定額を確認できると言えるでしょう。
ほかにも、購入時の価格をベースとした査定や、リフォーム・メンテナンス履歴の評価なども実施しており、資産としての適正な評価を期待できます。
「スムストック住宅販売士」が査定と販売を行う
スムストック住宅の査定・販売は、不動産のプロフェッショナル・「スムストック住宅販売士」が行います。
一般的な不動産仲介会社に所属する住宅販売士との違いは、”自社建物に関する知識の豊富さ”です。
スムストック住宅販売士は、スムストックに加盟している各ハウスメーカーに所属しています。
たとえば、積水ハウスのスムストックで不動産売却を行う場合、積水ハウスの住宅に精通した販売士が、査定から販売まで一貫してサポートしてくれるのです。
したがって、一般的な不動産仲介での売却と比べて、より適正な価格での売却が望めると言えます。
建物の価値を明確にして販売する
従来の不動産査定においては、土地価格と建物価格の総額が表示されます。
一方、スムストックでは土地と建物の価格を別々に表示するため、建物の価値を買主にアピールできるのが特徴です。
一般的には、建物よりも土地の方が高価になるものです。
しかし、耐震性が非常に高い、高品質な素材を使用しているなど構造面で優れた住宅や、著名なデザイナーが手がけた住宅などは、建物の方が高く評価されるケースも少なくありません。
このような場合、建物の適正価格を伝える手段があることは売主にとっても大きなメリットになるでしょう。
スムストックに関する評判・口コミ
ここでは、スムストックに関するインターネット上の評判・口コミを紹介していきます。
家の良さを引き出してくれる売却活動
家を売却するにあたり、当初は別の不動産会社でも話を進めていたのですが、もともと積水ハウスさんで建てていただいたという経緯もあり、今回、仲介をお願いした積和不動産(現:積水ハウス不動産東京)さんにも並行してお願いすることにいたしました。
担当していただいた佐々木さんにはいろいろとご提案をいただいたのですが、特に私が驚いたのは、募集広告の出来栄え。家の良さを本当にうまく表現した写真を撮影していただき、それを使って、実にインパクトのある広告提案をしていただきました。
これを見た時、他社とは明らかに違うと感じると共に、我が家の良さをきちんと理解してくれるこの会社にお任せしようと、その後は同社に一任することに。
結果的には大変良い取引が出来たと満足しております。
引用元:売却されたお客様の声 VOL.3 |スムストック
住宅の資産価値に注目する姿勢を評価
(「スムストック査定は買い手がつかなければ意味がないのでは?」に対して)
おっしゃるとおり、買い手がつかなければパフォーマンスで終わります。
ただ、取り組みとしては良い方向性だと思います。
例えば同じ築後15年の中古戸建が2つあって、適正にメンテナンスがされている住宅と、何もしていない住宅で、同じ価格というのはどう思いますか?今までの不動産業界では、メンテナンスに関係なく、中古住宅は建物価値はゼロに近く、土地価格で査定され、売買させられていました。
不動産も大切な財産です。
中古住宅であっても、土地価格だけでなく、建物のメンテナンス状態によって建物か価格に差をつけるようにすることは大切です。
不動産業界がそういう姿勢に変わらないといけないのです。
(後略)
引用元:スムストック査定って意味あるの?| Yahoo!知恵袋
時間はかかるが売れる
一般的に土地価格が一坪5万円しないような田舎では、スムストック査定方式で建物評価を適性に行ったとしても売れないと思われるかもしれないが、土地と建物を分けてチラシ等に表示するため、時間はかかるが売れている。どれだけ我慢して建物に思いを持って売却するかにかかっている。
引用元:X(旧Twitter)
スムストックに関する良い評判の中で特に多く見られたのが「家の価値を正しく評価してくれる」という意見でした。
一般的な不動産仲介による売却では、立地や築年数、土地の価値などが重視されるため、建物の持つポテンシャルを活かせないこともしばしばあります。
しかし、各ハウスメーカーの住宅に精通した「スムストック住宅販売士」が在籍するスムストックを利用すれば、建物の魅力を十分に引き出した売却活動が可能となるでしょう。
再販売価格が高い
ふとスムストックの物件を覗きに行ってみたんだけど、高くね?
写真は両方1982年建築の築42年。(実家より古い) そんな時代の建物、寒すぎて住めんだろうよ、、 そんな建物に1000万超の値、信じられない、、
最新ローコストで方が新築した方が快適に思えてならない、、買う人いるんだろうか、、
引用元:X(旧Twitter)
私はアイ工務店とか一条工務店も気になってるんだけど夫が「長期優良住宅でスムストック認定されているHMじゃなきゃ将来が不安!高いけど長い目で見たら得をするし安心して暮らせる!」と。分かるよ、30年40年後を考えたらハイブランドメーカーのほうが安心なのは。でも高すぎるんだよおおお😭💦💦
引用元:X(旧Twitter)
一方で買主の視点に立つと、「スムストックの販売価格は高い」という声が散見されました。
スムストック住宅の販売価格は、地域によって多少変わるものの、築30年以上でも1,000万円を超えるケースが多い傾向にあります。
近年では、1,000万円以下で一戸建てを新築できる「ローコスト住宅」の需要が急激に伸びつつあることから、それ以上の価格であえて中古住宅を選ぶことに難色を示す人がいるのも、致し方ないと言えるでしょう。
とはいえ、スムストック住宅の強みでもある、各ハウスメーカーの「ブランド力」と「安全性」への信頼は依然として見受けられます。
時間はかかっても、最終的に納得度の高い売却ができる可能性は高いと言えるでしょう。
スムストックを利用するメリット
ここでは、スムストックを利用する2つのメリットを紹介します。
- 家の適正価格がわかる
- ハウスメーカーの保証制度を引き継げる
順番に見ていきましょう。
家の適正価格がわかる
スムストックを利用すれば、売りたい家の適正価格がわかります。
従来の不動産仲介での売却においては、家の築年数や立地・土地の価値などの一般的な基準による査定から、建物自体が正しく評価されないことも少なくありませんでした。
一方、スムストックでは、家の躯体や内装、これまで行ってきたリフォームやメンテナンス状況も個別に査定します。
住宅としての価値が適切に評価されることで、数字には表れにくい「どれだけ大切にされてきた家か」という点も買主にアピールできるのです。
ハウスメーカーの建物保証を引き継げる
建築時に付帯されたハウスメーカーの建物保証は、残存期間内であれば買主に引き継ぐことが可能です。
通常、中古住宅の売買においては建物保証を引き継ぐことができません。
したがって、スムストック住宅における保証の引継ぎ制度は買主にとってもメリットとなり、早期売却を後押しするでしょう。
スムストックを利用するデメリット・注意点
ここでは、スムストックを利用する際に注意したい点を2つ紹介します。
- 高く売れない可能性もある
- 定期的な家のメンテナンスが必要
順番に見ていきましょう。
高く売れない可能性もある
スムストックでは、土地と建物の値段を個別に表示することで、建物の価値を適正に評価しています。
しかし、これは必ずしも家が高く売れるということではありません。
建物の状態や構造などによっては高値がつかない可能性もあるため、過度に期待しないことが大切です。
また、現状として「家を建てる余裕が無いから安い中古住宅を買おう」と考える人も少なくありません。
したがって、どれだけ魅力のある家でも、中古である以上、売却価格に妥協が求められる点も考慮しておくべきでしょう。
定期的な家のメンテナンスが必要
「スムストック住宅」に認定されるには、スムストックの定める基準に従って長期的な点検・メンテナンスを行う必要があります。
一般的な住宅であれば、メンテナンスの実施は家主の判断に任されるため、よほどのことが無い限り行わない人もいるでしょう。
しかし、スムストック住宅として売却をするためには定期的な点検と修繕が必須となり、かつ点検・修繕費用は自費です。
住宅の品質と安全性を守るために必要な手間と出費ではあるものの、自己判断で調整できない点はデメリットと言えるでしょう。
スムストックはこんなケースにおすすめ!
スムストックの利用がおすすめなのは以下のようなケースです
- スムストック参加企業で建てた家を売りたい
- 比較的状態の良い家を売りたい
詳しく解説します。
スムストック参加企業で建てた家を売りたい
売りたい家が以下のスムストック参加企業で購入した家である場合、スムストックの利用がおすすめです。
- 旭化成ホームズ
- 住友林業
- セキスイハイム
- 積水ハウス
- 大和ハウス工業
- トヨタホーム
- パナソニックホームズ
- ミサワホーム
- 三井ホーム
- ヤマダホームズ
各企業に「スムストック住宅販売士」が所属しているため、一般的な仲介による不動産売却と比べて、より建物の強みと魅力を活かした売却活動が期待できます。
比較的状態の良い家を売りたい
「せっかく家を建てたのに、離婚や急な転勤で家を手放さなければならなくなった」
このような場合もスムストックの利用がおすすめです。
スムストックでは、定期的なメンテナンスによって保全された建物を取り扱っています。
したがって、築浅で内装設備も整った状態の良い家はスムーズに売却できる可能性が高いのです。
スムストックがおすすめではないケース
以下のケースに当てはまる場合、スムストックの利用はあまりおすすめできません。
- 家の老朽化が進んでいる
- 早く家を手放したい
家の老朽化が進んでいる
スムストック住宅に認定される条件の一つに、「50年以上のメンテナンスプログラムに沿って家のメンテナンスを行っていること」があります。
したがって、必要な修繕がされず、損傷や老朽化が目立つ家の場合、スムストックでの売却は難しいと言えるでしょう。
他の不動産仲介会社を利用した売却も検討することをおすすめします。
早く家を手放したい
「とにかく早く家を売って現金化したい」と考えている場合も、スムストックの利用はおすすめできません。
一般的な仲介での売却の場合、売却期間は数ヶ月〜半年程度かかると言われています。
したがって、現金化を急ぐ場合は仲介でなく買取専門業者への相談がベターと言えるでしょう。
買取専門業者であれば、最短1週間での現金化も可能です。
スムストックでも買取サービスを実施していますが、仲介での売却よりも制限がかかるため、専門業者を利用するのがおすすめです。
スムストックに関するよくある質問
最後に、スムストックに関するよくある質問に回答します。
スムストックは売れない?
結論から言うと、「売り方とタイミング」によります。
「中古住宅は新築より安いもの」といった固定観念から、スムストックは安さにこだわる人からは避けられることがあるのも事実です。
しかし、スムストックに限らず、不動産売却は買主との縁に左右されやすいものです。
販売価格の高い家がすぐに売れることはありますし、反対に安くてもその家を求める人がいなければ、なかなか売れずに苦戦することになるでしょう。
最終的には家を売るタイミングと販売戦略がカギを握ります。
以上の点から、「スムストックは売れない」と一概には言い切れないのです。
スムストックEXPOとは?
「スムストックEXPO 住宅博」はスムストック参加企業による中古住宅の展示会です。
年に2回開催されており、積水ハウスのスムストックでは、2024年5月および11月に開催されました。
「スムストックEXPO 住宅博」では、スムストック住宅の中でもハウスメーカーの純正リフォームが施された物件を見学・体験できます。
スムストックでの不動産売却を考えている場合は、雰囲気を掴むために一度足を運んでみてもよいでしょう。
まとめ
ここまで、不動産流通システム・スムストックについて、概要から口コミ、不動産売却に利用するメリット・デメリットまで詳しくお伝えしました。
スムストックは、積水ハウスをはじめとした大手ハウスメーカー10社が参画している、中古住宅専門の不動産売買ブランドです。
従来の不動産査定では評価されてこなかった「躯体の丈夫さ」「リフォーム・メンテナンス履歴」「建物自体の価値」などを適正に評価し、家が持つ魅力を最大限に活かした不動産売却を行えるのが特徴です。
また、各ハウスメーカーの家に精通した「スムストック住宅販売士」が査定から販売まで一貫して担当するため、安心して売却活動を任せられます。
一方、スムストック自体の認知度が低いことから、売却に時間を要する可能性に注意が必要です。
不動産売却を成功させるポイントは、入念な情報収集です。
スムストックに限らず、幅広い不動産会社から比較検討するようにしましょう。
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